エトワールの木漏れ日

舞台、ライブ、イベントなどの備忘録

舞台『神ノ牙-JINGA-転生』観劇備忘録

 

 1/9(水)マチネ・ソワレを観劇させていただきました。

 

 

 まずはネタバレを回避した感想を。

【観劇直後の感想ツイート】

 舞台「神ノ牙」を観劇しました。
ここまで「二階席からも観劇できないのが悔しい!!」と思わせられたのは久しぶりです。
この舞台の持つスペックを100%堪能するなら是非一度は二階席、もしくは後方席から観てほしいです。個人的には二階席から観たかった!帰りたくない!明日も観たい!! 笑

 プロジェクションマッピングは後方の方が見やすいというのもありますが。何よりも全体が見える席からの殺陣の迫力を感じてほしい。
近ければもちろん剣先をかわす繊細な部分まで味わえます。しかしこの舞台に関しては近すぎると目で追えない迫力や、映像と音と動きのシンクロを体感してほしいです。
(サーシャの長距離移動を表現する映像には、あまりの再現度の高さに高所恐怖症&乗り物酔いしやすい私は椅子が動いているわけでもないのに少し酔ってしまったほどです 笑)

 牙狼系を見ていない人でも特撮好きさんは特に楽しめるのではないでしょうか。後半の盛り上がりは私でも「うぉぉお!!!」っと血が騒いだので!笑
童心にかえってというより、大人がワクワクするエンターテイメントアクションです!

 皆さんも仰っていますが、ドラマの映像等を使って劇中に丁寧に解説してくださっているので予備知識ゼロでも楽しめると思います。
というか、あれだけ丁寧な説明を入れて逆に舞台として浮かずに自然と物語に組み込んでいらっしゃったことに感心しました。

 もちろんドラマや過去作を見たほうがより深く楽しめることは間違いないのですが。逆にドラマを見た人たちにこそ是非劇場に観に来てほしい。「そういうことだったのか!」という驚きと生ならではの感動を味わえるので。
ドラマを見た人は舞台で補完できて。舞台を観た人たちはドラマでさらに深められる。商売上手だわ!

 1/9(水)の日替わりゲスト緒月遠麻さん。
緒月さん!マチネでも笑わせられたのにソワレで額に「宝」の文字を書いてくるとかズルすぎます!!!
絶対に表情を崩さなかったアミリ様まで堪えきれずに笑ってましたよ!もう最高すぎます 笑

 まさか宝塚退団後に緒月さんのオスカルを拝見できるとは!笑
アフタートークで井上さんが自分のことを「オスカル役」と仰っていましたが正確にはアンドレ役でしたね。というか井上さんで愛する者のために片目を失う役とか普通に見たいので、もう本当に神回でした!
あと井上さんの色気。テレビ画面越しでも凄い…と思っていたのに生は色香半端なかったです。


ここまでが私の観劇直後の感想ツイートまとめになります。円盤購入の参考になれば。
以降ネタバレを含みます。

 

 

 

プロジェクションマッピングについて】

 今回の舞台には驚かされました。プロジェクションマッピングとの相性が良かったどころの話ではなく。プロジェクションマッピングが持つ魅力と「ここまで出来るんだぞ!」という可能性を示し大きく広げた作品だったと思います。

 紗幕に投影された映像と役者さんとの見事なシンクロ。今回の舞台は殺陣があるとはいえ10月から(本稽古は12月から)と随分早い時期から稽古をしているな、と思っていたのですが。あのシンクロ率を見て納得いたしました。あれは一朝一夕でできるものではありません。「稽古」というより「修練」という言葉が相応しい稽古期間だったのではないでしょうか。
 とくにシビれたシーンがこちら。ジンガが一度倒れて敗れたか…と思いきや。ぴくりと手が動き立ち上がってからの圧巻の演出!音と映像とお芝居のシンクロには血が滾るほどの興奮と爽快感すらありました。

 私は基本的に役者さんの演技や歌声をじっくりと見たい派なので、演出補助以上の過度なプロジェクションマッピングについては好みから外れることが多いのですが。この舞台の凄いところは映像の〝技術〟はもちろんのこと、何よりもその〝バランス〟が素晴らしかったことにあると思います。
 というのもエンターテイメント性に力を入れた作品は演出だけが妙に浮いてしまったり、エピソードの羅列になってしまい内容が薄く感じられてしまうこともあるのです。
 しかし「神ノ牙-JINGA-転生」は物語としても面白かった!芝居で物語に引き込む部分とエンターテイメントで魅せる部分の繋ぎが上手く、見事に調和されていたのです。感服いたしました。
 これほどの感動を与えたのは、こういった技術に頼りきるのではなく。使いこなし作品としての魅力を引き出すだけの演出力と役者さんの情熱あってこそだと思うので、誰でもできることではないなと。
 「芝居・映像・ダンス・アクションすべてのエンターテイメントを含めて鮮烈に舞台化」の煽り文句は伊達ではありませんでした。
 総指揮・演出の井上正大さんの才能と情熱を肌で感じた舞台でした。ありがとうございます。

 

 

 

伊波杏樹さんのお芝居について】

 二度観劇した方は気がついたと思いますが、まず冒頭のオープニング曲「慟哭の彼方」に合わせての出演者総出のプロローグは舞台のあらすじであり再現となっていました。
 そして伊波さんファンの方なら声だけでトミノ様の声が伊波さんだと気づいたと思うのですが、勘のいい方はこの時点でその後の展開が読めたかもしれませんね。
 私は逆に、以前伊波さんが役者としてだけでなく声も担当していた舞台もあったので「あぁ。伊波さん、今回はトミノ様の声も演じているんだ」と思い込んでしまいました。
 実際は〝ジンガに興味を持ったトミノが彼に近づくためにとった姿が友葉だった〟という。


『神ノ牙 転生』
ユヅキ オンタケ 清水佐紀さん
振れ幅の大きい二役を
実に見事に演じ切ってくれて…
実はユヅキは、トミノが人間界に
行くのを心配しトモハの姉になり
付き添ってきたオンタケでした
なのでトモハを援護するために
三神に激怒するなど、丁寧に役を
繋げてくれました
脚本 塩田泰造さんのツイートより


 後半の正体を明かしてからの声のお芝居の変化はやはり伊波さんの強みですね。今回初めて伊波さんを知った方の「さすが声優さん」という感想を見かけて嬉しく思いました。
 さらに言えば、以前出演された舞台『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~2017』の特番で共演者である九頭龍冬彦役植田圭輔さんから伊波さんは

「声優さんをやられてる方ってどちらかというと声優のお芝居に寄ったりするんですけど、彼女は違ったんですよね。読みの段階から。お芝居でこの台詞をこのトーンで言ってるっていうのがすっごい伝わってきたんで」

 と〝役者として〟評価してくださっているので、やはり伊波さんの声の変化で表現できるお芝居というのは役者として〝伊波さんならではの強いの武器〟だと改めて実感しました。
 今回の伊波さんの二面性のあるお芝居に引き込まれた方には、ぜひ舞台『スーパーダンガンロンパ2-THE STAGE-』も観ていただきたいと思います。元気はつらつとした演技だけでなく伊波さんの妖艶なお芝居も見ることができますので!

 

 

 


 ここからは感想等ではなく私の個人的思いです。

【原作のある舞台について】

 原作のある舞台だとよく聞かれるのが「原作を知らなくても楽しめますか?」という言葉。
 まず「原作を予習して来てください」なんて制作側がいう舞台はほとんどありません。大なり小なり上演中に世界観の解説は入ります。
 しかし正直に申しまして脚本や演出の技量によって〝解りやすさ〟に差はあります。ただそれは原作のない舞台にも言えることです。「最後まで世界観がよく分からなかったな…」という舞台もあります。

 なのでもし不安であれば、脚本家・演出家の過去作品の評判を調べる。チケットが余裕そうであれば、初日以降の評判を見てから買う。もしくは出来るだけ初日の方に観劇をして面白ければチケットを買い足す、などの手段はあります。
 でも、できれば前評判に左右されず自分の感性で判断してほしいのが本音です。


 とはいえ原作を知っていた方が解りやすく。そしてより深く楽しめるのは事実です。
(例えば原作を知らなければ「登場人物の死が悲しい」というだけの感情が、原作を知っていると「この死の状況は前世で大切な人を守りきれなかったあの場面と同じ演出になっている」という気づきがあり、より深く感情を揺さぶられる。といった具合です。)


 ただ私としましては「原作を知らないから」という理由で観劇しないのはもったいないということもお伝えしたいと思います。
「原作を知らないからこそ楽しめる」ということもあるのです。
 今回の舞台はドラマの時系列で描かれなかった「裏側で何が起こっていたか」という部分の舞台化なので少し違いますが。原作の舞台化となると、まず原作を見た時点でネタバレになってしまいます。
 また原作を見たことで〝原作との差異〟が気になって舞台が純粋に楽しめないということもあります。真っさらな状態だからこそ純粋に〝舞台作品として楽しめる〟という利点もあるのです。
 ですから「原作を知らない」というだけでハードルを感じたり、「原作を知らなければならない」と重荷に感じることで舞台から足が遠のくのは寂しいことだなと思います。
 ただこれは私という、多くの人に舞台を観に来てほしい舞台贔屓の人間からの視点です。原作のファンの方からしたら複雑な思いを抱く方もいるでしょう。大事なのは原作をリスペスクトする気持ちを忘れないこと。舞台を観て面白いと感じたらぜひ原作にも触れてほしいと思います。その方が多角的に視点から作品への理解を深められることは間違いないですからね。


 原作を知らなくても舞台は楽しめる。
 原作を知ったらより深く舞台を味わえる。
 そのことを知っていただけたら嬉しく思います。