エトワールの木漏れ日

舞台、ライブ、イベントなどの備忘録

『アニストテレス』ミニライブでの伊波杏樹さんの歌唱

 

 アニストテレスのオーディションについての想いはすでにツイッターで言葉にしたので、こちらでは伊波さんの歌唱についての想いを綴りたいと思います。

 

 まず伊波さんの歌唱力について、私は「まだ伸びる。もっと上手くなる」という意味合いで満足していませんでした。表情や情感の込め方など表現力がずば抜けて長けているだけに、歌唱力がそれに追いついていない。そんなもどかしさを感じていたのです。

 しかし、そこは努力の人=伊波杏樹さん。アニストテレスでのミニライブで魅せてくれました。聴かせてくれました。
 伸び、声量、安定感。うっとりと伊波杏樹の歌声で作り上げられた世界に安心して酔えるひと時がそこにはありました。これまではその表現力に呑まれるという感覚だったのですが、今回は酔わせてくれたのです。

 薄暗いステージの上で穏やかライトを受け。生の演奏とスタンドマイクで歌い上げる姿。目線、表情、指使い。揺れる肩からは大人の女性の雰囲気すら漂っていました。そしてその唇からこぼれる吐息の絡んだしっとりとした歌声。
 まさか人生でこんな日が来るだなんて思ってもみませんでした。私も学生時代の合唱コンクールで歌った。日本国民なら一度は聴いたことのあるお馴染みのあの名曲『君をのせて』から‘色気’を感じとる日が来るだなんて!


 そして短いコメントを挟んでの『Let It Go』。もう前奏での表情、まとった空気からこのまま英語で歌い出すのではないかと期待してしまったほどです。(さすがにそれはありませんでしたが 笑)
 これもまた誰もが知るディズニーミュージカルの一曲。曲の盛り上がりに乗せて自分の力だけで立ち上がる力強い女性像を見事に歌い上げていらっしゃいました。伊波さんはその表現力により歌だけで聴衆をその世界に引き込み、物語を魅せてしまうんですよね。

 私はどうしてもミュージカル贔屓なので、こういった目線になってしまうのですが。舞台に関して伊波さんは自分を‘きっかけ’にしてほしいと仰っています。そしてすでにどっぷりと演劇の沼に浸かっている人間の目から見ても「もっと舞台で輝く伊波杏樹さんの姿を観たい!」という想いは募るばかりです。
 より多くの人を演劇の世界に。できるなら生オーケストラのミュージカルに連れてきてほしい。歌、お芝居、ダンス。ひとつひとつの経験をすべて己の武器に変えていける人なので、本当にこれからが楽しみで楽しみでしかたありません。
 そんな私個人の願いは置いておくにしても。もっと多くの人に‘伊波杏樹’としての歌声を届けられる機会がほしい。より多くの人に伊波杏樹さんの多面的魅力に気づいてほしい。そんなことを願わずにはいられません。

 

 雑誌「BRODY 12月号」でも伊波さんは仰っています。「私が飛び込めば、ついてきてくれる人たちと共有できる」と。この言葉を読んだときに私は改めて感じました。伊波さんは確かに私たちファンの存在を感じてくださっている。この人なら安心してついていけると。
 アニストテレスでのMCでも「ファイナリストのみんな緊張していると思うので、みなさんの笑顔と声援であたたかくあたたかく包み込んであげてください」といったニュアンスの言葉を紡がれました。
 それはご自身のオーディション時の記憶であり、舞台やAqoursでのライブ経験から身をもって感じた言葉なのでしょう。
 自分が経験したことを優しさで返し、繋いでいける人だから。これからもそんな彼女を照らす優しい光のひとつになれたらと思います。