エトワールの木漏れ日

舞台、ライブ、イベントなどの備忘録

『Aqours 2nd LOVELIVE! HAPPY PARTY TRAIN TOUR』にみる伊波杏樹さんの『澪田のライブ』から繋げる


 舞台『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~2017』の再演にあたり、澪田唯吹役である伊波杏樹さんへの期待は初演よりもはるかに大きなものになっていたと思われます。ラブライブ!サンシャイン!!という大きなプロジェクトに関わったことによる知名度からの集客的な期待。そして初演で演じた澪田への評価。
 それは初演ではいなかったメインビジュアルのポスターに澪田唯吹が存在していること。公開ゲネプロ前の囲み会見に伊波さんも参加していたこと。初演では録音だった澪田のライブシーンの歌が生歌に変わったこと。等々から感じ取れます。

 

 私が何よりも嬉しかったのは澪田のライブが生歌になったことです。これもAqoursとしてのライブ経験が評価されてのことかもしれません。しかし伊波さんはその実績にただ甘んじることなく、少なくとも私が観た大阪公演5公演全てで違うアプローチをみせてくださいました。
 そこにいたのは経験を積んで一回り成長した伊波杏樹であり、毎日違うライブを見せてくれる澪田唯吹の姿だったのです。そのことがはっきりと見て取れたのが大阪公演大千穐楽での澪田のライブ。

 

「みんな~今日は集まってくれてありがとうね~!」

(ここから千穐楽だけのアドリブ)

「あれれ? 唯吹にはいっぱいのお客さんが見えてるんすけど、声が聞こえないっすね。おかしいっすね~。みんな~今日は集まってくれてありがとうね~!」

(湧き上がる客席の拍手)

「「唯吹~!」」キャストの方々
「ありがとうね~!」
「「唯吹~!」」キャストの方々
「澪田?」
「「「唯吹~!」」」

(ここからキャストに加えて客席からも声が上がり始める)

「足んないっす…。澪田!」
「「「「唯吹!!」」」」

(客席の声も大きくなり始める)

「澪田!!」
「「「「「唯吹!!!」」」」」

(そして大きな澪田コールと大喝采!そこはまさに澪田唯吹のライブ会場そのものでした)

「それじゃ元気いっぱいに歌うっす!それでは聴いてください。君にも届け」

 

  これは千穐楽ならではの特別な演出です。舞台にもよりますが、基本的に観劇中に発せられる音といえば拍手、手拍子、笑い声とすすり泣きくらいで舞台で声を上げての応援はマナー違反。
 だからこそ、この千穐楽での「澪田のライブ」はキャスト同士の信頼関係があった上で、演者が求めたから実現した貴重で特別な奇跡といえます。伊波さんの実績。役者としての真摯さから得られた協力。そのすべてが繋がった瞬間なのです。


 そして伊波さんの経験を活かす力、繋げる力はここで終わりません。
 Aqours 2ndライブツアーHPTT。『スリリング・ワンウェイ』で拳を突き上げ私たちをこれでもかとばかりに熱狂させた堂々たる客席への「もっと!!」の煽り。この姿を見た瞬間、私のなかで熱いものが込み上げると同時にある光景が甦えりました。それが千穐楽での『澪田のライブ』です。

 前述の通り舞台で観客が役者に向かって声を出して声援を送るということは滅多にありません。それゆえにある意味あの演出は賭けでもありました。客席が順応しきれず微妙な空気になってしまう可能性もあったのです。その賭けにすらも伊波さんはAqoursとしてのライブ経験と、共演者の方々との信頼関係と協力により打ち勝った。この経験は伊波さんにとって確かな実感として自信となったはずです。
 そしてその自信は2ndライブツアーまでにAqoursとして参加した様々なフェスでの経験を経て、確かな形として2ndライブツアーでのパフォーマンスに生きていました。
 伊波さんが常に掲げる目標である「日々精進」。努力すること自体は誰にでも出来ることかもしれません。けれど伊波さんはそこからさらに次に結びつけ、ステップアップして繋げる力を持っています。


 『Daydream Warrior』で魅せたダンスレベルの飛躍的向上。正直あそこまで踊れる人だとは思っていなかったので度肝を抜かれました。
 ダンス経験者である小林さん、斉藤さんと並んでのパフォーマンス。プレッシャーがなかったはずがありません。
 私も空手道の団体形で経験したことがあるのですが。上手い人に囲まれての練習は嫌でも自分の出来ていない所、遅れている所、足りない所が目につくものです。そして鏡にはそんな現実が容赦なく映し出されます。
 そこで感じる劣等感や悔しさ、足を引っ張っているのでないかという焦り。そういうものを突きつけられて向き合わなくてはならない。けれどその分、技術は格段にレベルアップします。それはもちろんそれに見合った努力あっての成果です。
 見劣りしないためにはどうしたらいいか必死に考えて練習して。そういった努力の結果があの『DW』でのキレキレのダンスだったと思うとまた目頭が熱くなります。

 そしてAqoursで積んだダンス経験がまたさらに今後の伊波さんの将来に生きていくことでしょう。いつの日かミュージカルの舞台に立ち、目の肥えた演劇ファンに評価されるとき「人気の声優のお嬢さん」で終わらせない力を今まさに伊波さんは培っているのです。
 伊波杏樹という表現者の才能は底が見えない……というより、まだ飛び立つための準備にすら思えます。伊波杏樹さんはその成長過程が美しい。


 伊波杏樹さんは役者であり、声優です。そのひとつひとつの仕事はバラバラに見えるかもしれません。けれどそのすべてをひとつに繋げ新たな糧とする努力を彼女はしているのです。同じひとりの人間がしていることだから漠然と繋がっているのではなく、伊波さんは繋げる努力をしている。
 歌も、声優も、役者も、どれもが伊波杏樹という人間の魅力。そのどれもが作用しあって伊波杏樹という人を輝かせている。だから彼女の多面的魅力から一つも目を離すことができない。

 Aqoursのツアーまだ続きます。このツアーのなかでも彼女はさらなる進化を私たちに見せて、魅せてくれることでしょう。
 伊波さんは舞台の顔合わせやライブ前など、折に触れ「愛を持って取り組みたい」というニュアンスの言葉を口にされます。役に対して、作品に対して常に愛を忘れない人だから。
Aqoursを愛してくれてありがとう」
 これからも応援することで愛を返していきたいと思うのです。

 

 

※ちなみに千穐楽での澪田のライブシーンは舞台袖からではありますが、通販にて絶賛発売中の舞台『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~2017』Blu-ray、DVDの初回盤に映像特典として収録されていますので。気になった方は是非!

(突然の宣伝 笑
基本的に舞台の円盤は一期一会だと思っておいた方がいいです。ダンガンロンパのようにDVDもBlu-rayも出してしまえるような人気公演なら在庫を抱えるくらい生産されるかもしれませんが、小さな劇団では確実に売れる数だけしか世に出回りません……。劇場予約の時に「通販があるだろう」なんて余裕で構えていたらなかった!なんてこともあります。
今後の参考までに。今あるチャンスを大切に。)