エトワールの木漏れ日

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舞台『僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Stage 本物の英雄 2020年&2021年』観劇備忘録

舞台『僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Stage 本物の英雄 2020年&2021年』観劇備忘録


2020年ver.
大阪公演
3/27(金)公演

2021年ver.
東京公演
12/3(金)初日(配信)

京都公演
12/24(金)18時公演
12/25(土)18時公演
12/26(日)18時千穐楽(配信)

観劇させていただきました。


1年9ヶ月前。ステインの信念たる叫びを生で体感したとき。多くの人にこの感覚を生で味わってほしい。そして出来ることならヴィラン連合を演じる方々にも、この衝撃を肌で感じて演じてほしい。そう願っていました。
そしてこの期間。ヒロステ出演者の方々の別作品での様々なお芝居に触れたことで、キャストの皆さんへの愛着も膨らみ。私にとって『ヒロステ』は特別な公演になっていました。

 

 

 

 

 

【印象に残っている役者さん】

緑谷出久役/田村心さん

コロナ禍で次々に楽しみにしていた公演が中止になっていった頃。ヒロステの公演に限らず、田村心さんがブログやTwitterに綴ってくださった隠すことのない「悔しさ」「悲しさ」「やるせなさ」を滲ませた本音の言葉の数々が本当に支えになっていました。
本音の言葉であると伝わってきたからこそ、そこに宿った〝希望の言葉〟が本物であると思えたからです。
ご自身の胸の内をしっかり届けつつ、ファンの方の思いも汲み取り、そしてスタッフさんへの配慮も忘れない。そんな一つ一つの言葉からはいつも大切な人たちを守りたいという気持ちと。常に感謝の気持ちが伝わってきていました。

多くの舞台の公演が中止になるたび。何度も何度も落ち込んでは田村さんのブログを読み返していました。この悔しさを忘れてはいけない。悲しさを忘れてはいけない。慣れてはいけない。
それは大好きな舞台へのわくわくする気持ち。希望を忘れることだから。そう思って過ごしてきました。

そして「ヒロステ」をこの先も続けていくための苦渋の決断の先に。ようやく迎えることができた今回のPLUS URTRA Ver.の公演。

「僕らは全て乗り越えていく。
本物のヒーローになるために!」

オープニングで田村心さん演じるデクくんからこの言葉を聞いた瞬間。声を上げて泣きました。待ってた…ずっと待ってたよ!!と。
演劇の火を消したくないと願ってきた一ファンの私にとって、諦めずにここまで辿り着いてくれた彼ら彼女らは紛れもなくヒーローでした。ありがとう。

人気作だからといって続編があることが当たり前ではないからこそ。ここまで辿り着いたことを本当に嬉しく思います。そしてこの先も長く、田村心さん演じる緑谷出久くんの活躍を見守れるよう応援していきます!

 

 


爆豪勝己役/小林亮太さん

私が今まで観てきた2.5次元作品の中で最も実在性の高さに驚かされたのが、小林亮太さん演じる爆豪くんです。
というか〝いる〟。
かっちゃんが〝いた〟!

2020年ver.最後の公演となってしまった大阪公演での千穐楽でのカーテンコールにて。
「早よ帰れや!」
腕を指差して
「じ・か・ん・!」
上手方向の客席をチラッと見てからの
「チッ……」
舌打ちしてからの退場&出久くんのフォロー
「みんな体調に気をつけて帰ってねって意味だと思うんだ!」

文字にすると上手く伝わらないと思うのですが本当に爆豪くんそのものだったのです。当時小林亮太さんのことを存じていなかった私は(本気で思ったわけではありませんが)「こういう人なのかな?」と錯覚に陥るほどに。
そうして時は流れて舞台『鬼滅の刃』にて竈門炭治郎役の小林さんを拝見したとき。当たり前なのですが「爆豪くんと全然違う…」と驚くと同時にカーテンコールで流した素の小林さんの涙に「めっちゃ素直ないい人!!」と心動かされたことをよく覚えています。
そして
「炭治郎くん=小林亮太さん」
は結びつくのですが
「爆豪くん=小林亮太さん」
が別作品を観てなお結びつかないことに戸惑いました。

そして今回大千穐楽配信の特典映像にて、爆豪勝己の姿で素で喋る小林亮太さんの姿を見て「爆豪くんの中に別の人がいる」という感覚に陥ったことにより悟りました。
〝爆豪くんはいる。〟
どんな結論だよという感じですが…笑
そのくらいハマり役でいらっしゃいました。

また、個人的に爆豪くんのようなキャラクターは「そんな大声でそんな言い方しなくても…」と萎縮してしまうので苦手だったのですが。大阪公演での客席をチラッと見てからの「チッ……」の舌打ちにキュンとして以来大丈夫になりました。
こういった趣味嗜好に変化をもたらしてくださる出逢いというのは、柔軟な思考を持つために大切だと思っているので。そういった意味でも魅力的な爆豪勝己を表現してくださった小林亮太さんにとても感謝しております。

豊かな才能ゆえに高すぎる自存心が育ち。持たざる者であるはずの出久くんを畏怖し拗らせてしまった爆豪くん。
そんな彼を見守り導く教師やプロヒーローたちにより生じる、彼の心の葛藤や成長を小林さんがどのように演じてくださるのか。心から楽しみにしています!

 

 


・ステイン役/川隅美慎さん

この備忘録の冒頭にも書きましたが川隅美慎さん演じるステインの〝信念たる叫び〟が無ければ、私がここまで『ヒロステ』にハマることはなかったかもしれません。そのくらい圧倒的な存在感と迫力でした。

ステインの信念たる叫びを目の当たりにした瞬間に生まれた〝全てを圧倒する静寂〟。そして、もしかすると彼が正しいのでは?と考えさせられてしまう〝心の動き〟は、あの世界に住む彼らの受けた衝撃そのものだと思うのです。

フィクションではあるのだけれど。“人が心を動かされた瞬間”。そこに真実が宿り、それはもう受け手にとっては本物になる。そういったアニメの中の追体験をできることが2.5次元舞台の強みであり魅力だと思います。その醍醐味を川隅美慎さん演じるステインは味わわせてくださいました。

そして出来ることならヴィラン連合を演じる方々にステインの信念とカリスマ性を肌で感じて演じてほしいと願っていたので、それが叶ったことが嬉しかったです。

 

 


麗日お茶子役/竹内夢さん

お茶子ちゃんも実在性が高くて、話し方の特徴はもちろんのこと!とくに職場体験を終えたあとの
「とても有意義だったよ」コォォォォォ
この場面の見事な白眼再現がツボでした 笑

 

 


蛙吹梅雨役/野口真緒さん

ヒロアカで大好きなキャラの一人なので、初めて拝見した時。その再現度の高さに感銘を受けると同時にとにかく嬉しくなったことをよく覚えています。
話し方に加えて梅雨ちゃん独特の語尾のビブラートの表現が素晴らしく。元々声質が似ているのかな?と思ったら。
舞台『少女ヨルハ』では凛とした発声で軍人である教官を演じていらして。そのギャップでさらに驚かされました。(舞台『少女ヨルハ』もいいぞ!突然の宣伝w)

 

 


・芦戸三奈役/永利優妃さん

A組の場面になると見たい人たちが多すぎて「目が足りない!」となるのですが。ダンスシーンとなるとその圧倒的ダンスパフォーマンス力で自然と視線を掻っ攫ってくださる存在でした。マジでキレッキレ!!今後も見守りたい役者さんの一人です!

 

 


・青山優雅役/橋本真一さん

今回も青山劇場では大笑いさせていただきました!基本は「ジュリエットと山田」だと思うのですがクリスマスでの「ノエルとトナカイ」が一番お気に入りです。どれだけのレパートリーがあったのでしょうね。

『ヒロステ』ではどの場面でも隙なく小ネタを挟んでいた面白優雅くんでしたが。舞台[HAMLET]ではレアティーズ、オフィーリア、クローディアス、先王など。4人のキャストが入れ替わり立ち替わり一つの作品の中で別の人物を演じるという難しい作品に出演されており。とくにオフィーリアで見せた儚い女性の絶望の演技には目を見張るものがありました。
ぜひとも『ヒロアカ』のこの先の展開を橋本真一さん演じる青山くんで観たい!!そう願っています!

 

 


・プレゼント・マイク役/岡本悠紀さん

『ヒロステ』における歌唱シーンは岡本さんのシャウトあってこその心の躍動と言っても過言ではないでしょう!!そのくらい高揚させてくれる歌声に痺れました!

また、相澤先生役&ネイティブ役の瀬戸祐介さんとのコントも毎回笑わせられました。個人的に『2020年ver.』大阪公演での
「水の呼吸 壱ノ型」
「やらせねぇよ!!」
が一番お気に入りでした 笑




・トゥワイス役/川崎優作さん

この公演期間中に最もさらに好きになったキャラクターが川崎優作さん演じるトゥワイスです。
舞台上でのコミカルな言動はもちろんのこと。Twitterに上げられたトゥワイスの日常的なツイートが「あるある!トゥワイスやってそう♪」と彼の親しみやすさの魅力にさらにハマってしまいました。
それと同時にこの先の展開を思うと「やめて…これ以上好きにさせないで…っ」という感情も強くなって……。
トゥワイス。そして仁くん&トガちゃん周りのエピソードは全部やってほしい。好きになればなるほどしんどくなるのは分かっているけれど、その追体験こそが本物だと思うので。

(東京公演でやっていたというトガちゃんをおんぶしてあげるトゥワイスは見られませんでしたが。自分の膝を差し出してトガちゃんをセットに登らせてあげる京都でも優しいトゥワイスくんが見られたので嬉しかったです!)

 




【トガヒミコ役・13号先生役/伊波杏樹さんについて】

《ここまでの道のり》

=2019年=
年末の頃
ご自身のラジオにて
「来年、再来年まで繋がっていく舞台が決まっている」

=2020年=
1月
ラジオ『アッパレ伊波』にて
「ある舞台でアクションをやるかもしれないからカポエイラを習い始めた」

その後
パルクールも習い始めた」

2月7日(金)
伊波さんの誕生日にスタートした伊波杏樹全国ツアー『cartes Á jouer』にて
・7月の舞台
・2021年の舞台
・アクションをやるかもしれない役
・オーディションで勝ち取った役
・『モンテ・クリスト伯』ともう一つ読まなくちゃいけない原作がある

「早くみんなに伝えたい!みんな絶対に喜んでくれると思う!私も楽しみだし、みんなも楽しみにしててね!」

この伏せられた舞台こそが『僕のヒーローアカデミア』トガヒミコ役だったのです。

3月
舞台『僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Stage 本物の英雄』公演期間中に『僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Live』通称『ヒロライ』が2020年7月17日(金)~26日(日)開催されることが発表されました。
同時にヴィラン連合のキャストが解禁。
このライブイベントにて初登場となる予定でした。

3月27日(金)
この日の公演を最後に『本物の英雄』は緊急事態宣言により公演が中止となりました。

7月17日(金)~26日(日)
後日『ヒロライ』の公演期間を使って、中止となった『本物の英雄』に本来登場予定のなかったヴィラン連合を加えたPLUS URTRA ver.として再演が決定。
しかしこの公演も中止。

=2021年=
12月3日(金)
『本物の英雄PLUS URTRA ver.』初日


トガヒミコ役の情報が解禁された当時。「公演中止になった皆さんの気持ちを思うと、すぐには私からの告知はできなかった」という心遣いをみせていらっしゃいました。
同じ役者だからこそ痛いほどに分かる気持ちがあったのだと思います。でも他のキャストさんと同じくらい伊波さんも、トガヒミコという役と真摯に向き合い。公演を楽しみにしていらっしゃったことが伝われば幸いです。




《トガヒミコ役》

『2020年ver.』では当然ですが出演はされていなかったので。ラストシーンでの出久くんの台詞「僕はならなくちゃいけないんだ。本物の英雄(ヒーロー)に」の場面で「荼毘、トゥワイス、トガのシルエットだけが映し出される」という演出でした。

『PLUS URTRA ver.』では上記の場面に加え。オープニング、フィナーレナンバー。そしてブローカー義爛が死柄木に荼毘、トゥワイス、トガを紹介する場面が丸っと追加されていました。

まずオープニングでトガちゃんが出久くんに手を伸ばし向けた恍惚とした眼差し。この時点で次回作への期待値が爆上がり。

そして「私も入れてよ!ヴィラン連合!」の意気揚々とした空気から死柄木に「餓鬼」と言われ一変した「あぁ?」と敵意を露わにした鋭い目つき。
からのさらに一変する「トガです!トガヒミコ」印象的なこの台詞。
喋り方の特徴を捉えているのはもちろんのこと!このくるくると変わる表情の一連の流れがまさにトガちゃんそのものでぐっと掴まれました。

そしてフィナーレナンバーでトゥワイスと戯れる無邪気な表情と。ヒーローたちに向けた冷たく静かな敵意を隠すことない視線のギャップ。またそこにはトガちゃんの魅力の一つである〝狂気を孕んだ色気〟もあり、最高でした。


個人的に『ヒロアカ』の中でトガちゃんは大好きなキャラクターの一人だったので。「トガヒミコ役=伊波杏樹さん」と知ったとき二重の意味で大喜びしました。
・大好きなトガちゃんを大好きな伊波さんが演じてくれる
・大好きなトガちゃんを信頼する役者さんである伊波杏樹さんに演じてもらえる
伊波さんのファンとして嬉しかったことは言うまでもないのですが。今回のトガヒミコ役に関してはそれ以上に
「信頼している役者さんに大好きなキャラクターを演じてもらえる!!」
という喜びが何よりも強かったのです。

肌荒れするくらい役に入り込んだり。役のために断食までしてスタイルを維持したり。カポエイラを習い始めたり。そういった真摯な役との向き合い方を見てきたからこその信頼が役者伊波杏樹さんにはあります。
一言では語れないトガヒミコという女の子。
猟奇的なだけではない
彼女にとっての「好き」
彼女にとっての「普通」
伊波さんならそれらをきちんと受け止めて表現してくれる。

今回は出番としてはまだそれほど多くはありませんでしたがその中でも、「出久くんを見つめる恍惚とした眼差し」と「ヒーローに向けるもの言いたげな冷ややかな視線」にその片鱗を感じさせてくださいました。
しかもですよ!伊波さんの手札である“殺陣”の本領はまだ発揮されていない!いやもう次回作『平和の象徴』での活躍に期待しかありません!!

 

 

《13号先生》

公演前に放送されたラジオ『伊波杏樹のRadio Curtain Call』で「意外な場面にも出ている」と仰っていたので、これは兼ね役があるな!と期待していました。
そして初日の配信で13号先生のお声を聴いた瞬間。「ここかー!」と思わず声を上げてしまいました 笑

配信では顔が見えるかどうかまでは分からなかったので、京都公演で実際に確認できるのを楽しみにしていました。
そして迎えた京都公演初日。顔の両サイドは完全に遮蔽されているものの、オペラグラス で見ると照明の当たり方にもよりますが真ん中の部分は表情まで見ることができました。

ネット(単純にトガちゃんの鬘を被る前の状態だったのか。13号先生のスーツを着るにあたり専用のものだったのかは分かりませんが)を被って髪が完全に隠れた状態だからこそ顔の良さが際立っており、原作どおりの美人さんでした。

青山くんが突然歌い出した場面では
24日:目をぱちくりさせてきょとん顔。
25日:顔の前で腕をゴシゴシさせて目を擦る仕草をして怪訝な表情
基本的には現地でもオペラグラスで余程ガン見していないと見えないレベルの見え方ではあったのですが。そういった制約もありながら、ある意味自由度の高い役なのかなと思いました。

お客さんから見えているか見えていないかは関係なく、きっちりお芝居をして13号先生の魅力を精一杯引き出そうとする姿勢。そういった伊波さんの役者としてのアプローチが好きだなと改めて感じました。これも生の観劇だから味わえる発見と喜びですよね。

そして千穐楽後の兼ね役解禁により「13号先生やってたのトガちゃん役の人だったの!」と驚かれている感想をたくさんお見かけして、伊波さんのファン以外の方に声でのお芝居をたくさん褒められていたことにとても嬉しくなりました。伊波さんの声、話し方、息遣いでの表現の幅は本当に凄いですよね!





【終わりに】

伝染した思想が彼らヴィランの中で育っていく過程をより深いリアリティを持って表現されていくと思うと、期待と少しの恐さもあります。
「ステインの信念の叫び」に、これほどまでに心動かされた感情の中に「感銘」の類のものがあることを否定できないからです。もちろん出久くんの言った「ヒーロー殺しは納得はしないけど、理解はできたよ」。飯田くんの言った「奴は信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ」という前提あってのことですが。
次回作『平和の象徴』にてどんな感想を持つのか。そして。演じる人物の深い部分まで理解して演じてくださる役者。伊波杏樹さん演じるトガヒミコを通して、私が「トガヒミコ」にどういった思いを抱くのか。
作品として楽しむと同時にじっくりと己の思考と向き合いたいと思います。